2018.01.15
日本人の暮らしとと住まいに学ぶ
 障子のある暮らし(後編1)
      浅野 平八
 
前回は日本家屋の遺伝子ともいうべき障子について、その工夫の跡をたどりました。今回は暮らしの中の障子を見ることにします。
 テレビの時代劇で、下級武士の家の障子に取手が付いているのを見ました。取手といっても、障子紙を貼った平面の一部に凹みをつくったものです。障子には裏表があります。桟のみえる室内側が表で、紙を貼るほうが裏です。裏側に手がかりとなる丁度いい高さのマス1コマだけ、表側から紙が貼ってありました。部屋に入るとき、ここを取手にして引き開けるのです。一般住居でも見かける工夫ですが、江戸時代からあったとは。テレビの大道具さんの芸の細かさに感心しました。
 このような暮らしの知恵は破れ障子の修理にも発揮されます。障子紙は下から順番に糊代を重ねて貼ってあるわけですから、破れた場所だけを補修すると絆創膏を貼ったようになります。それではあまりに不格好ですから恰好をつけて、破れた部分を補うに足る最小限の紙片を模様のように紙切りして貼るのです。
 庭先から紅葉の葉を取って来て、修理する箇所にあてがいその上から紙片をはるという粋な修繕を見たことがあります。障子にちらほら紅葉が散ってあたかも意図した図柄のようでした。育ち盛りの子供達が破いてしまった障子を、母親がこのようにしてつくろっていたのですね。
 遊び盛りの子供が座敷から庭に飛び出すと、障子口(庭に面した座敷の障子)から出入りするものではないと叱られます。子供の頃の思い出が障子とともにあります。
 ともあれ日本の住まいは木と紙からできているわけですから、立ち居振る舞いも静かに暮らすのが流儀です。
障子紙も5年過ぎると黄ばんできます。貼り替えることが必要です。家族総出の一日仕事となります。
 筆者の家では障子の張り替えとなると、古い障子紙を剥がし取り骨組だけになった障子を洗うのは子供の仕事、紙貼りするのは父の仕事でした。貼り終わった新しい障子紙に、口に含んだ水を勢いよく霧吹きする父の姿を恰好いいと思ったものです。こうすると紙がピーンと張って弛みがなくなるのです。人目を盗んでまねをしたところ、霧吹きが霧にならず、ただ水を勢いよく吹きかけただけとなり、せっかく張り替えた障子に穴が開きました。
 貼り替えた純白障子で部屋が明るくなり、清々しい気分とともに居住まいを正したくなります。
障子のある風景で思い出すのは福島県の大内宿です。江戸時代からの宿場町で、大勢の観光客が訪れています。坂道の両脇に流れる水路の沿って立ち並んだ民家の障子はさまざまにその家の暮らし方を伝えています。
 (続)
本稿は一般財団法人 生涯学習開発財団 発行「生涯学習」に、2013年4月から2015年3月までに連載された「日本人の暮らしと生活」を加筆・修正をして再録したものです。 写真・資料等は当方にて入れ替えております。

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