暮らしのどうぐ

 第46回 「スタンダードなドアハンドル」                                 
 
2017/01/31                          森 晴秀
  『mordic(モドリック)』というメーカーをご存知であろうか?建築家やインテリアデザイナーでなければ直接には知らない名前である。1964年創業のイギリスの建築金物メーカーである。ドアノブ、ドアハンドル、錠前、扉周り製品などの人の触るところの建築金物・ハードウエアを専門に製造・販売している。
 60年代後半にモドリックの製品は日本に入ってきた。値段は高かった。しかし、建築家たちはこぞってその製品を彼らの設計した建築や住宅に使った。理由は、デザインがきわめてモダンでいて飽きのこないスタンダード性をもっていたこと。そして材質がとても良く、堅牢であったことだ。当時、材質や堅牢性ですぐれた日本製品がなかったわけではない。しかし、デザインがいかにも古臭い。建築家好みではなかった。いまや、日本でも老舗の堀商店をはじめ建築金物すぐれたメーカーは数多くあり、デザインも良くなった。
 写真のドアハンドルと錠前は1976年から取り付けられたもの。40年は使いつづけている。ぶつけられた傷などで塗装がすこし剥げてはいるがまだまだ現役。デザインは目立たず、それでいて美しく、取っ手として握り心地もとてもやさしい。モドリックのカタログを調べると「Classic 3015」として載っていて、ロングセラー製品である。
 建築家で住宅の名手であった吉村順三は「手の触るところに気を配らないと住まいが貧相になる」と語っていた。古くならない言葉だ。
 
◇どうぐ
Modoric classic lever handle 3015
価格等はメーカーにお問い合わせください。
 
第45回 「ときを生け、場の品格をつくる」
 
2017/01/17                         森 晴秀 
   わたしの入っている事務所のエントランスではほぼ毎週ごとに、生け花がかわる。日本の四季折々の行事にそくしたテーマの時もあれば、ハロウィーンやクリスマスにあやかっているときもある。「へ―、こうしたアレンジもあるか!」と驚くこともしばしば。毎朝、それを眺めるのが楽しみだ。 
生け花を「どうぐ」として見ると、生けている方に怒られるかもしれない。デジタル大辞泉の「どうぐ」の解説の二つ目の項目に『他の目的のために利用されるもの。また、他人に利用される人。手段。』とある。その意味からすると生け花は立派な「どうぐ」である。花や木々を生けることによって、場の雰囲気をつくりだし、空間の品格をあげてくれる。すごいなーと思う。
今週の生け花はお正月の余韻ののこる華やかなもの。それでいて寒の最中に春を感じさてくれるネコヤナギと小桜がある。この中にグリーンの菊があるのをきづかれましたか。グリーンの菊があるとは!
 
 第44回 「艶やかな漆のワインクーラー」
 
2017/12/27                                                                  森 晴秀
 ワインクーラーである。年末や年始にお見えになった客人にワインやシャンパンを冷やして出すのに出番が多い。
 朱と黒の混じった艶やかな外観ボディ、内部はざらざらとした肌触りの荒々しい茶褐色の皮膜でおおわれている。これ、実はワインクーラーではない。漆桶(しっつう)という漆塗り師がつかう実用品である。
 漆器はさまざまな専門職と工程をへてつくられる。漆桶は漆掻き職人や漆屋から漆塗り職人へ漆を届ける運搬と保存をかねた容器。もともとは木桶や曲げわっぱでつくられていたが、戦後は防水加工された紙筒でつくられるようになった。写真のものは紙筒製である。実際に使われていたもので、桶の内部にはべったりと漆がついている。
 漆は耐水性をもっているため、厚塗り状態の内壁の耐水性能はたいへんに高い。漆は、漆の木から採れる樹液で天然の高分子化合物。主な成分はウルシオールという油である。硬化するのには25℃ぐらいの適温と湿度85%ほどの高い湿度が必要。酸やアルカリにたいする耐薬品性や耐水性、そして防腐性をもっている。天然ではもっともすぐれた塗料であり接着剤でもある。
 買い求めたのはデパートで催されていた金沢展、出店していた漆工房さんで見つけた。クーラーだけではなく、花器や観葉植物器としても粋である。もったいないがゴミ箱として部屋におけばアクセントになる。
 
◇どうぐ
漆桶(しっつう) 価格は3500円(税別)
 
 第43回 「するするとワイヤーを伸ばして使う室内物干し」
 
 2017/12/04                                    森 晴秀
 みなさんは、洗濯物を室内干しするときにどうされていますか?
室内干し用の金物は、いろいろな金属メーカーから出されている。そのほとんどが、天井に台座の金物を取りつけ、竿をかけたり、バーを降ろして洗濯物をかけるタイプのもの。見た目も存在感もかなりゴツイ感じである。
なかなか便利なものを最近見つけた。室内物干し用のワイヤーシステムで、ホテルのバスルームについている収納式ワイヤー物干しの発展形である。式片方の壁に台座を取りつけワイヤー収納ボックス本体を固定、対向する壁に台座とフックプレートを取りつける。必要な時に、ワイヤーを引張りだしフックまで伸ばして固定する仕掛け。ワイヤーの長さは最長4.0m、最大荷重は10㎏。重さ10㎏の目安は、組み合わせならワイシャツ5着、ジーンズ2本、バスタオルは3枚、Tシャツ5着、トレーナー3着、スカート2着である。充分な量。
デザインがとてもスッキリしていて、室内にあっても目立たない。ワイヤーの戻る速度は安全性を考えてゆっくり目。フックに引っかけたワイヤーの安全ロックが本体にある。デザイン性、機能性、安全性などの面からGOOD DESIGN賞を受賞したのもうなずける。
つくっているのは大阪の森田アルミ工業(株)。もともとはアルミの外階段、テラス、バルコニーなどの大型アルミ製品をつくっていた企業。いま、デザインや機能性にすぐれたインテリアアルミ金物を多く手掛けている。
 
◇どうぐ
製品名:室内物干しワイヤー pid 4m
価格:定価12,000円(税別)
製造・販売:森田アルミ工業(株)
 
 第42回 カンティレバーを生かした木材の椅子
 
2017/10/25                                        森 晴秀
ホワイトオーク無垢材のカンティレバーを活かしたダイニングチェアーである。先日、ミッドタウンの木工家具屋さんのショールーム「HIDA」に偶然立ち寄った時、一目ぼれした。
 足から伸びたひじ掛けと背もたれがカンティレバーとなって、はっとするような美しいフォルムを生んでいる。デザインはインダストリアルデザインの巨匠・川上元美さん。軽快なデザインであるが、座り心地やひじのかけ具合はとても穏やかでしっくりする。座板は無垢材を削りだしており、彫り込まれた座面は着座時にとてもフィット。一つ一つの造作がとてもしっかりして、手への馴染みもピタッとしていてやさしい。何世代もつかわれ、伝えられていく家具である。
 製品シリーズ名は「SEOTO」、瀬音からきている。浅瀬を流れる水の音のように、心を穏やかにしてくれる家具へとの想いからだそうだ。木材種はホワイトオーク、ビーチ、ウォルナットの3種類、それぞれに味がある。座面高が標準は420㎜だが、テーブルが高い場合などために460㎜のハイタイプも用意されているのはとてもありがたい。座面は張地仕様のものもあり、数十種類の張地から選択できる。張地仕上げは、ダイニングの場が華やかにし、空間にアクセントつけてくれる。
 まっとうな木工家具メーカーが日本にはいくつかある。日本国内の木工家具技術は世界でもトップレベル。ここでいう「まっとう」とは、技術的に優秀なことだけを指すのではなく、美しいデザインの椅子やテーブルをしっかりした技術的裏付けをもってつくれることを指す。これは多くない。その中の一つが飛彈産業。匠の街・飛彈高山に飛彈産業が創業したのは1920年、はや100年近くになる。トーネット調や民芸風やカントリー調の椅子やテーブルを得意としてきていた。無垢材のカンティレバーを活かした美しいSEOTOチェアーをつくられたのは、2011年のこと。いまやモダンな木工家具の雄である。
 
◇どうぐ
飛彈産業 シリーズ名[SEOTO]  製品名KD201ANアームチェアー
W57×D51×H74  座面高SH42 
ホワイトオーク¥60,000(税別)~ウォルナット¥75,000(税別)
*座面高SH46はホワイトオーク¥70,000(税別)~ウォルナット¥85,000(税別)
 
 第41回 馴染んだツヴィリングのハサミ&ペーパーナイフ
                                                                                     森 晴秀 
2017/09/25
男にとって本に囲まれた書斎をもつことが夢だった時代はずいぶん昔のような気がする。ハサミ&ペーパーナイフのセットで、海外から送られてきた手紙や雑誌『NATIONAL GEOGRAFIC』の封を書斎や執務室(ずいぶん古い言い方だな!)で切る。そんなイメージが、このステイショナリーにはある。
私の馴染んできたどうぐの中で二番目に古いのがドイツのツヴィリング製のハサミ&ペーパーナイフのセット。55年の付き合いである。12歳のとき当時西ベルリンに仕事で滞在していた母から誕生日の祝いに送られてきた。その美しさ、すばらしい切れ味にこころが震えた。
ハサミは切っ先鋭くシャープなデザインの中に優雅さがある。ペーパーナイフは取手に手彫りの彫金が施され、ハサミと同じくシャープなデザイン。その二つがしっかりとした革のケースに納まっている。仕舞うとそれぞれがケースにスーと吸込まれていく。ハサミの中心に、有名な双子のマークとともに[JAHENCKLES ZWILLNGSWEPK SOLINGEN]の文字。が、とても12歳の少年が日常的につかえるツールではなかった。机の引き出しに封印し、時々眺めて時を重ねた。
それから10年以上たち、編集者として働きはじめた。文字や写真や紙との格闘である。それ以来、このハサミ&ペーパーナイフセットは相棒となった。いま、このレベルの切れ味のハサミやペーパーナイフはいくつもある。しかし、このエレガントさをもったどうぐはない。新聞などの切抜きをスパッと切っ先鋭くおこなえるのも代え難い。
ツヴィリングは創業1731年、ドイツ・ゾーリンゲンの刃物やテーブルウェアの老舗。いまや、キッチンウェア、テーブルウェアの世界的なメーカーで、赤い双子のマークで有名。母の時代から使っていたカトラリーは我々を経て、娘たち家族の食卓に並んでいる。余談だが、ツヴィリングのよく切れる包丁はいまや日本の岐阜県関町の自社工場で大半がつくられているそうだ。
 
 第40回 小ぶりで見やすい、直径28センチの電波式掛け時計 
                                                                                                                                   森 晴秀
2017/09/06
 わが家には掛け時計が4つある。リビングダイニング、2つの個室、そして共同でつかう書斎件作業室に。4つともクオーツ式で、最も古いのはリビングダイニングにある時計。30年動いている。時刻は進んだり遅れたり、時計によっていろいろだ。個室の一つが壊れた。、東急ハンズ、無印良品、家電量販店などをまわって選んだのがこれ。
文字や短針長針の見やすさ、大きさ、価格、デザインのバランスなどが選択の基準。特に電波時計を探したわけではない。もっと文字盤や針がシャープでデザインが美しい時計はあった。直径が320㎜もあり、家庭用では大きすぎる。狭い個室だと280㎜以下のほうが存在感は薄れ、インテリアがすっきりする。選んだ時計は直径280㎜、フレームが太いので実際は260㎜ぐらいの感じだ。フレームを薄くすればもっとシャープ感が増すのに、ちょっと残念。この電波時計、暗くなると秒針が動きをやめ電池の消耗を減らす賢い奴でもある。
使ってみると、電波時計はすごい!時計は人が時刻を合わせるものから、時計自身が自分で時刻を合わせるものに変わっている。一日一回、深夜の3時前後に日本標準時に自動的に調整している。わが家の標準時刻を表わすものになった。
日本標準時の電波を送ってくるのは、独立行政法人情報通信機構(NICT)の福島県にある「おおたかどや山標準電波送信所」。250メートルの電波塔が山頂にあり東日本全域をカバーしている。標準電波送信所は、もともとはテレビ、ラジオ、ケイタイ、などのさまざまな通信電波の基準値を各所に送るための施設。その標準電波に標準時刻をのせて送っているのである。
日本標準時をつくっているのは何処か?東京都小金井市にあるNICTの新世代ネットワークセンターにある原子時計である。JR中央線武蔵小金井駅の改札を出ると『日本の「とき」標準時刻をつくるまち』というデジタル時刻掲示板が目に飛び込んでくる。
 
◇どうぐ
セイコー 電波式掛け時計 KX379 ブラウンBとシルバー Sがある。
参考価格¥3780(税別)
 
 
 第39回 デカ文字のキッチンタイマー
                                                                                                   
                                                                                       森 晴秀
これベストセラーである。8年ほど使っていた数字挿入式のタイマーが壊れかけてきたので購入した。数字が大きく見やすいのが選んだ第一のポイント。遠めでもハッキリと数字が確認できる。
最初に見かけたのは、家庭のキッチンではなく街の中華屋さん。なにしろ数字が大きいので目立つ。それ以降、ラーメン屋さん、餃子屋さん、蕎麦屋さんなどあちこちの街の料理店の厨房で見かけることがおおくなった。あっちでピッピ、こっちでピッピである。業務用でも定番である。
ボタンは分、秒、スタート&ストップの3つだけ。操作はいたってシンプル。押しボタン式の数字設定は、数字挿入式に比べると長タイムにはちょっと手間がかかるが、ボタンも大きく使い勝手は悪くない。30秒や45秒設定のとき、私は+1分で設定し残りの秒数の逆算で使うこともある。音の大きさ調節や時計機能もなし。電池は単4一本、ボタン電池でないのも便利。ただ、デザインが大きく丸く可愛らしいのは好き嫌いがあるかも・・・・・。
 
◇どうぐ
タニタ「でか見えタイマー 100分」 参考価格1,000円(税別)
 
 第38回 茶道具入れになった竹のお櫃
                                                                               森 晴秀 2017/08/08
これは事務所で使っている茶道具入れである。もともとが何であったかすぐにわかる人は、60代以上の方や民芸品や工芸品が好きな人だ。竹で編まれたお櫃(おひつ)である。お櫃は炊きあがった飯をいれて保存する器。櫃は蓋のついた容器ことで、米櫃(こめびつ)、飯櫃(めしびつ、おひつ)、茶櫃(ちゃびつ)、聖櫃(せいひつ)、唐櫃(からびつ)、長櫃(ながびつ)などのことばが身の回りにはある、いやあった。
お櫃は炊飯器が保温機能をもつようになって家庭から消えていった。私の家でもお櫃は二つあるが、本来の機能である飯の保存用ではなく茶碗の収納器や乾物の入れ物としてつかっている。竹製の飯櫃では下の器にふきんを敷き、炊きあがった飯を入れる。竹製のため、蒸れることはなく水分が適度に飛んで保存され、時間がたっても美味しいごはんが食べられる。炊飯器に炊きあがった米をそのまま保温しておく家庭が多い。水分が米に戻ってどんどん味が落ちるので、お薦めできない。蓋をとってふきんやペーパータオルをかけておくほうが飯の味は落ちない。
このお櫃は、ある骨董屋さんで見つけた。可愛らしいフォルムと丁寧な仕事が気に入り即購入。直径は26㎝もある。手の込んだ仕事ではあるが工芸作家がこれでもかと技量を見せる品でなく、日用品をきちんと作っている日常使いの品の仕事である。洒落ているのは、台座の底部、蓋の縁、取っ手、そして編み込みのところどころに紫色の竹がつかわれている。作り手の真摯な仕事への姿勢と茶目っ気がかんじられる道具である。古い道具探しは、それを今にどう活かすかの楽しみがあるのでやめられない。
 
◇どうぐ
竹製のお櫃 たぶん大分県でつくられたと思う。
購入価格は3500円(税別)購入先は東京都八王子の骨董店
 
 
第37回  KIWIソムタムピラー                                           森 晴秀 2017/7/26
ソムタムをご存知ですか?熟れていない青いパパイヤのサラダで、もともとはタイ中部の料理だが、いまやタイの代表的なサラダになった。ラオスやベトナムやミャンマーなどにも同様のモノがあります。
若いパパイヤを千切りし、専用の鉢で叩き繊維をつぶします。それに沢蟹、魚貝などさまざま食材をいれ、ナンプラー、砂糖、唐辛子、レモン、ニンニクなどで味付けをした辛いサラダです。湿気のある暑さにはとても合います。
パパイヤを千切りにするためにつくられたのがこのピラー。堅い青いパパイヤでもサクサクと千切りが出来あがります。切り口が鋭利過ぎないためざっくりした千切りとなり、タレがよく絡む。日本人がこうした調理器具をつくると、もっと切れ味鋭くなりシャキシャキとして素材のまったり感がなくなってしまうから不思議です。
タイの調理器具店で買ってきたのが10年ほど前。日本で青いパパイヤはなかなか手に入りません。そこで、思い出したのがパリの惣菜店にはかならずあるニンジンサラダ。やってみるとニンジンが見る間に千切りになり、サクサクとした食感のとても美味しいサラダが簡単にできた。ゴボウもOK.です。ダイコンやキュウリでも可能ですが、ちょっとヨタッとしてなます風になります。いちどカボチャで試してみようと思う。日本の通販サイトでも手に入るのでおすすめです。
◇KIWIソムタムピラー
KIWI社のタイ製 価格は1200円(税別)前後。
購入は通販サイトやタイ食材屋さんで。
 
 第36回 皮のメンテナンスならドイツ生まれのラナパーだ!                  2017/6/14
                                                                                                                                 森    晴秀 
土曜日の朝は靴の手入れときめている。汚れを落とし、メンテナンス用の保革油を塗ることを無心にしていると心が穏やかになってくる。ついでにかみさんの革靴やバッグの手入れも仰せつかっている。そのとき使っているのがラナパー〔Renapur〕だ。   皮製品とのつきあいは子供のころからである。野球のグラブ、よそゆき用の革靴、陸上部だったのでスパイクも革、そのころはスキーブーツも革製だった。親父や先輩たちに手入れの仕方や保革油の塗り方を教わった。道具は手入れをしないとまっとうな働きをしない、そして美しくないことをたたきこまれたといっていい。当時の革製品のメンテナンス用品は、有機溶剤が入っているものが多かった。
   ラナパーと出会ったのは20数年前のドイツ出張だった。有機溶剤が入っていないので購入。使ってみると皮への浸透も適度だし、ツヤの出方、撥水性もすこぶる良かった。ミンクオイルも良いが、皮が軟らかくなって型崩れする。ラナパーにはそれがほとんどない。
  成分は蜜ロウとホホバ油で100%天然。さっと塗るだけで重厚なツヤがでる。私はピカピカに磨くのが好みではないのでありがたい。Saphirなどの靴磨きも補修のときにしか使わない。ラナパーはドイツ南部の田舎町で1988年に生まれた。バイオリンのガット絃のメンテナンスに蜜蝋が使われていることがヒントだそうだ。有機溶剤なしの皮と人と環境にやさしいメンテナンス用品として世にでた。    私は革製品以外にも木  製品や木部、竹製品にもいろいろと使っている。色落ちしたり、ささくれだった木部がしっとりとする。価格は250mlの大瓶で3000円(本体価格)とチョッと高めだがゆうに1年は持つから割安。
 
◇どうぐ
ラナパー レザートリートメント
・250ml スポンジ2個付き ¥3000(税別)
・100ml スポンジ1個付き ¥2000(税別) 
 
第35回 イチゴスプーンはどこへいった!
                                                                                        森   晴秀 
身のまわりから何時のまにか見なくなったものがある。その一つがイチゴスプーン。
あまおう、さがのほのか、とちおとめ、紅ほっぺなど最近のイチゴは甘くて大きい。30年ほど前まで、イチゴは小さくてもっと酸っぱかった。そのため、子供にはつぶして牛乳と砂糖をかけたり、コンデンスミルクをかけてイチゴミルクにして食べさせていた。イチゴをつぶすときに使うのがイチゴスプーンである。普通の底がまるいスポーンではうまくつぶせないし、勢いあまると果汁が周りに飛びちって困った。そこで、登場したのがイチゴスプーンである。
  開発元はラッキーウッド(LUCKYWOOD)のブランド名で知られる小林工業。新潟県燕三条市の洋食器メーカーで、第10回で紹介した日本の老舗洋食器屋さんである。世に出たのは1960年ごろ。イチゴをつぶす底の平らなスプーンをラッキーウッドから金型職人・青山敞(たかし)さんに発注した。試作を重ね試行思考錯誤のすえ、職人さんのアイデアから今の形になったと小林貞夫社長にお聞きした。底のカーブと粒々はイチゴのホールドに役にたっている。粒々の自然なランダムさは青山さんのセンスだそうだ。昭和中期の家庭にはどこにでもあったイチゴスプーンだが、イチゴの改良とともに家庭の中から消えていった。
   いま、意外なところでイチゴスプーンをみるようになった。離乳食や介護食の現場である。ジャガイモやニンジンなどの固形物をつぶすのにとても便利だとのこと。納得である。幼きものと歳老いたものの食事の場で、新しい活躍の役割を見つけたイチゴスプーンに拍手。
写真の『ロマンス』シリーズのイチゴスプーンは、繊細な縁どりがされ持ち重りは重厚。優美なこのイチゴスプーンでイチゴをつぶし、イチゴミルクを食べたいな!
 
◇どうぐ 「イチゴスプーン」
製造販売:ラッキーウッド〔小林工業株式会社〕
・『デラックス』シリーズ イチゴスプーン ¥520(税別)
・『ロマンス』シリーズ イチゴスプーン ¥730円(税別)*写真はこのシリーズ
 
 第34回 ハートのペットボトルキャップ
                                                                                         森   晴秀 
 
20年前、ペットボトルの水を飲んでいる人は東京でもそれほど多くはなかった。水の種類もevianやContrex、Volvicなどほとんどがフランスの水であった。いまや日本の各地域の名水をよりどりみどりで手にいれることができる。
暑い季節に外歩きをしていると2本ぐらいの水や健康飲料を飲む。ペットボトルそのものの消費量が気になってきた。また水の国・日本の暮らし手として、何も海外や各地の水を有料で飲むことも気がひける。東京の水に限っていえば、30年前にくらべてじつに美味しくなっているし、私の住む地域は東京の名水として誉れがたかい。
「よし、ペットボトルをリユースして地元の水をいれて飲もう!」と決めた。これをはじめて東京の水にもいろいろな味があることが分かった。東京の水が不味かった30、40年前にくらべれば躊躇なく飲める。水道水の精製技術はあがっているし、取水する河川もきれいになっている。東京の水はどんどん飲むべしである。
ちょっと困ることがあった。スイムの練習にはプールサイドにたくさんのペットボトルが並ぶ。どれが自分のモノか区別がつかないのである。見分けをつけるためのキャップを見つけた。ハート形のかわいらしいフォルムで、色もさまざまなものがある。プールサイドに置くと一目で分かり、女性陣からも好評。
+dというデザインブランドで暮らしや仕事グッズをつくっている企業の製品である。デザイナーはSugiX(杉江・理)さん。このグループは、モノを等身大の分かりやすく、使い勝手のかわいらしいデザインにいつも仕上げている。
 
◇どうぐ
「ハートボトルキャップ」
企画・製造・発売:アッシュコンセプト 
カラー:クリアグリーン、クリアオレンジ、クリアスカイ、クリアブルー、クリアピンク、クリアイエロー、クリアレッド
価格:500円(税別)
 
 
第33回  安ワインが化けるオールドバカラのデキャンタ 
                                森 晴秀
 
 
 パリに暮らしていたころは、食や住まいや子供用品や旅にお金をあてることがまず第一で、高級なフランス製品にはとても手が出せなかった。35年前、1フランが50円前後の時代である。それでも、掘り出し物をさがすためにバンブーやクリニャンクールの蚤の市には子供たちを連れよく足を運んだし、パッサージュの骨董屋も目の肥やしによくのぞいた。いつも気になっていたのが、クリスタルガラスのバカラのグラスやデキャンタ。フランスが誇るガラス製品である。
 最近のバカラのクリスタル製品は、アンティークに比較してデザインも質も良いとは言えない。職人さんの腕が落ちたというより、企業が手間、暇をかけてモノをじっくりとつくりこむことをやめてしまったと思う。とても残念なことだ。だからアンティークを探していた。
 日本でバカラのオールド・デキャンタをさがすとけっこうあるが、値段もいい。出会ったのがこのデキャンタ。正式には「バカラ ディアマン ビゾー デキャンタ」という。値段も手頃だった。
 ディアマンはフランス語でダイヤモンドを表し、ギザギザしたデザインがきらびやかな特徴あるシリーズ。バカラには珍しく、カットされたものではなくプレス成形方式でつくられている。1904年のバカラのカタログにのっていて、ぼってりした形は愛嬌がある。バカラの刻印はないので1936年以前の製品で、本体と蓋に同じときにつくられことを表すナンバーが刻印されている。
 高さは約29㎝、直径は約14㎝と大ぶりで1リットルちかくはいる。ワインを入れるデキャンタというより、コニャックやウイスキーを入れるもので、カタログにはショットグラスもあわせて載せられている。1000円ほどのお手頃ワインをいれてみてビックリ。味も香りもとっても深くなり、ワインが化けるな!と飲み友達ともども楽しんだ。
 
 
◇どうぐ
オールドバカラのデキャンタ 「Baccarat Dimants Biseaux Decanteur」
購入はあるアンティーク屋さん。
 
 第32回 30年たって張替えたKEVI Chair
                              森 晴秀
捨てるか、オークションに出すか、張替えるか迷った。
30年以上使ってきたKEVI Chairである。長く使ってきたため、座や背もたれのクッションは痩せ、その留め金が出てきていた。とても長く座って作業をすることはできない状態である。さて、どうするか?
知り合いからヴィンテージチェアーの張替え職人さんを紹介された。「若いが腕は良いよ!」と。じゃあと、張替の見積もりを依頼。
KEVI Chairが発売されたのは1958年。60年を経て、今も発売されているロングセラーのデスクチェアーである。デザインはデンマークのラスムッセン兄弟。基本形は変わらず、いくつかのバリエーションが世にだされている。座の高さや背もたれの角度と高さがレバーハンドルで操作できる機能は当初から変わらない。足は当初は4本で今は5本足になっている。キャスターはラスムッセンらの発明でこれ以降のキャスターの世界標準になった。その機能性とシンプルなデザインが長くデスクチェアーとして世界で愛され、累計は600万本近くになるという。
座や背がプライウッドでできたKEVIはシンプルでスタイリッシュ。長く腰かけ仕事をするとなるとファブリックタイプに軍配があがる。職人さんが見積もりと張地のサンプルをもってやってきた。費用もだいたい思ったとおり。張地を見せられ、気持ちがかたまった。さあ、張替えだ。クッションのウレタンをたっぷりいれてもらうことにした。
そして、届けられたのがこの椅子。張地のブルーにはすこしブラックが入りとても落ち着い色調。室内のアクセントになる。たっぷりのクッションも座り心地が良い。張り替えてよかった。メカニックに油指してやればあと20年はもつ。張替えの職人さんに感謝である。
◇どうぐ
KEVI Chair 
◇修理してくれた人
立川椅子工芸の平山智さん。一級椅子張り技能士さんです。
 
第31回 ドイツ老舗の「かきかたえんぴつ」
                                                                                         森   晴秀
 
鉛筆を使わなくなってから久しい。
アイデアスケッチや絵コンテを描くときはステッドラーのシャープペンシルで、芯は9ミリ硬度2Bと決めている。女房どのは鉛筆愛好派で、いつもCARLの昔ながらの鉛筆削りでガリガリと先をとがらしている。
先日、小学生の孫の宿題の書きかたにつきあった。私に似て字はあまり上手ではなく、孫には申し訳なく思う。かわいらしい鉛筆で字をなぞっている。なになに、BのしるしとSTAEDTLERの文字とロゴが入っているではないか。ステッドラーの鉛筆は青の胴体に頭が黒じゃないの?
使わせてもらうと、Bの書き心地はとてもなめらかでスラスラと書ける。模様も動物、アラベスク、幾何学と3種類あってたのしい。名称は「かきかたえんぴつ」(これは商品名ではなく一般名だそうだ)、ステッドラーが日本スペックで小学生向けに開発した鉛筆である。
ステッドラー日本に聞くと、子ども向け製品への取り組みに力を入れていて、パッケージや仕様を日本向けに変えて新たに開発したとのこと。母親である娘は美術系なのでステッドラーの愛用者であったから3代のユーザーとなる。
私の小学生時代はつかっていた鉛筆硬度はHBである。日本鉛筆工業協同組合の春田恭秀さんによると、「最近の子どもは筆圧が弱いそうで、HBだと薄くて読めない文字の子もいるので、学校ではBや2Bをつかうように指導しているそうです」「軟らかい芯のほうが「とめ」や「はね」や「はらい」などの表現がきちんとできているかよく分かる」とのこと。なるほどである。
書き方のおさらいは子どもだけではないと思う。ボケ防止と心の修養に、鉛筆で写経や古今の銘文・詩歌の書き方をやるのもスマホの時代に良いのではないか。とそんな気がした。鉛筆メーカーさん、どうでしょうか?
◇どうぐ
「かきかたえんぴつ」HB、B、2B それぞれ3柄が4本の12本入り 参考価格¥907
製造販売:ステッドラー 
 
 第30回 ステンレスのレモン絞り
                                                                                       森 晴秀
 
我が家の食卓にはレモン絞りがよく登場する。野菜サラダだけではなく、いろいろな焼き物やなべ物にもさっと絞ってかけると爽やかな香りがひろがる。子供がちいさかったころはケーキつくりにも活躍した。長らく使ってきたレモン絞りはフランスのArcorcos社のものでガラス製。レモンの種が引っかかる突起がついていて便利だが、ガラス製のため絞りがいまひとつシャープでなかった。
銀座松屋のキッチン用品コーナーで見つけたのがこのステンレス製のレモン絞り器。突起部がすくっと峻立したさまは絞り具合を想像させてくれる。何かに似ているなと思いだしたのはベランダや屋上の雨水をながすドレイン。水気をながしながら種や葉っぱなど固形物はカットする機能はおなじ。
使ってみると、気持ちよくレモン汁が流れていく。絞りのシャープさはガラスに比べそうとうに優れている。受け皿には縁のカーブにそった注ぎ口があり、ステンレスのシャープさがよくデザインされている。絞るときに動かないように絞り部は受け皿とフック状のもので連結され、洗う時には分離できる仕掛け。発売は新潟県燕市にある青芳製作所。
写真の後ろにある大型のものはオレンジ絞り器
◇どうぐ
イビサ レモンスクイーザー 材質:18-8ステンレス
販売:㈱青芳製作所
定価:¥1200(税別)
 

http://casualproduct.shop-pro.jp/?pid=100911375

 
 
 
追伸:前回紹介したマネークリップ、知人が正式名と発売元を調べて教えてくれました。
製品名はバンカーズクラスプで、発売元はアメリカのバインダーメーカーSAUNDERS社。
 
 第29回 紙をさっとまとめるマネークリップ
                               森 晴秀
 
 マネークリップ、ダラークリップ、たぶんそう呼ばれているはずです。この製品の正式な名称を私はしりません。領収書、振込み用紙、メモした紙などをちょっとまとめておくのにとても重宝などうぐ。手元にあるのは、ステンレス製で全長が約141ミリのLサイズ、82ミリのMサイズ。小さな50ミリのSサイズもあります。
 この便利なクリップに出合ったのはずいぶん昔。そう、30年以上前になります。開業したばかりの事務所で、建築学科出身の若い女性がこのクリップを使って、いろいろなサイズの領収書をまとめていました。
「それ、何?」
「マネークリップと言うそうで、アメリカの銀行などでお札をまとめるのに使うらしいです。紙のサイズがいろいろでもまとまるので便利ですよ!」
「普通の文房具屋さんじゃ見ないけど、どこで売ってるの?」
「伊東屋さんです!」
 アマゾンはおろか、ネットもない時代であります。さっそく、銀座の伊東屋に行き、買い求めてからの愛用品。現在でもリアル店舗で売っているのは、たぶん伊東屋だけのはず。最近アマゾンでも見かけましたが、価格は3倍の暴利でした。
 紙を挟む長い口と、ステンレス板を曲げたバネが特徴です。薄く長いお札をきちっと止めるために考案された機能がデザインになっています。ダブルクリップだと小さなレシートが外れてしまうことがよくありますが、マネークリップではありません。Lサイズだと10ミリ以上も挟める優れもの。たぶん、どこかの小さな工場が作っているのだと思います。どなたか製造元、そして正式名をご存知の方はお教えください。
 
◇どうぐ
・マネークリップ
材質:ステンレス 大きさ:Lサイズ141ミリ、Mサイズ82ミリ、Sサイズ50ミリ
価格(税別):Lサイズ\250、Mサイズ¥150
販売店:伊東屋
 
 第28回 木製のジャケットハンガーは男のたしなみ
                               森 晴秀
 
 
スーツの上着やジャケットの肩のところが型崩れしている男たちをよく見かける。だらしないというより情けない格好である。もともと胸幅や肩幅のうすい日本人が、肩でジャケトを着るのはむずかしい。第一ボタンだけをかけ、チョッときつめくらいのサイズを選ぶのがまず鉄則。後ろ姿がとくに重要。できたら女性に見てもらうのがおすすめである。奥方、お嬢さん、ショップの女性の店員さんでもよい。女性の眼は厳しいですよ!
「ジャケットは肩で着る!」というイギリスの言葉がある。肩のところが大切なジャケットの型崩れのもう一つの原因は、ハンガーである。ハンガーは長さと厚みが大事で、特に肩先の厚みが薄いものは、ジャケットの肩の一部が飛び出してしまう。木製のハンガーで良いものがある。肩先の幅は50ミリ以上あり、一本の木からつくられている。価格もそれなりで、5千円前後である。そうしたものを夏冬用で20本近くを用意するとなるとかなりの出費。リーズナブルなものを探していた。
地元の大型スパーで適当なものを見つけた。白木で中心の部分で左右を結合したハンガー、長さは44センチ、厚みも45ミリある。各部ディテールはチョッと甘いが、価格は本体価格で1000円とお手頃。中国製であった。何本か買って使っていたがとても肩のあたりがなじんでジャケットが喜んでいた。買い足そうと出向いたら店は扱いをやめ、ペナペナの物しかなかった。
ところが見つけたのである。それも郊外の生活グッズ量販店、カインズホームで。つくりはほぼ同じだがディテールがさらによくなっている。値段はなんと税込み498円!驚異の価格である。長さは46センチとコート用だけで種類はなし。ジャケットには少し大きいが、肩幅のある私の上着にはまあ使える。コートには最適。カインズホームと社名が入っているので、中国で大量につくらせているのだろう。長さが44センチ、42センチのものを作ってください、カインズさん!
 
◇どうぐ
メンズコート用木製ハンガー
長さ46センチ、厚み45ミリ、白木 
価格:税込み498円
発売:カインズホーム 中国製
 
 第27回 醤油屋さんのこいきな片口
                                            森 晴秀
 
片口(かたくち)とはなんと粋な名前を付けたのだろう!うつわの片方に注ぎ口をつけたものを片口と呼ぶ。骨董、作家もの、ガラスの器、メジャーカップ型、そして海外の蚤の市などで見つけたものなどを入れると、二十以上の片口たちが我が家の食卓には時に応じてならぶ。
その中でもこれは変わりモノ。骨董屋の片隅にポツンとあった。白と落ちついたグリーンの大胆なツートンカラーにちょこんと注ぎ口がついている磁器。お尻には醤油屋さんのロゴマーク、最上醤油の文字、松葉のシンボルマークがあしらわれている。外径14㎝、高さ6㎝ほどの雑器だが、とても愛らしい片口。醤油屋さんのノベルティーのデッドストックだと思う。時代は昭和初期ぐらいであろう。値段は申しわけないぐらいの一つ800円、めっけものだ!
 日本酒入れる、ドレッシング入れる、白菜のおしんこを入れる、薬味をどっさと入れる、厚揚げにネギとおかかを入れる、トマトとモツアレラのオリーブ和えの器としてなど和洋中なんにでも使える。
 
 
◇どうぐ
・醤油屋さんの片口(昭和初期のお店の景品)
・価格:800円(税抜き)
・販売店:街の骨董屋さん
 
第26回 超ロングセラーの日東紡「新しいふきん」
                                                                                     森 晴秀
 
 
 小学校低学年のころ、我が家の台所のふきんは手ぬぐいだった。1960年代初頭、東京の風景が東京オリンピックの準備でざわついていたころ、このふきんに変わったのを覚えている。食器用のふきんは白の縁のもの、食卓を拭くふきんは赤だったか。食卓拭きは自分の役目だったからとてもハイカラで高級に映った。「新しいふきん」が暮しの手帖社と日東紡の共同開発であることを知ったのはだいぶ後のことだ。
 『暮しの手帖』編集部が1960年54号の特集でふきんを取り上げた。実証実験の結果、良いふきんとして4つのポイントに行きつく。①水をよく吸うこと、②洗って丈夫なこと、③しなやかであること、④ケバのつかないこと、である。『暮しの手帖』編集部から日東紡の研究室に共同開発のもうしいれがあった。日東紡の研究室は42種の生地を織り上げたという。そこから4種の生地が選ばれ、10名の主婦が6か月かけて実施テストをして生地を決め、使いやすい大きさを決定したところから製品化され現在にいたる。
 発売から56年、販売計は1億5000万枚をこえているという。2015年にはグッドデザイン・ロングライフ賞を受賞している。半世紀以上前に暮らしを便利に豊かにするどうぐとしての「新しいふきん」を開発した、暮しの手帖社の大橋鎭子社主や花守安治編集長、日東紡の研究室には頭がさがる。
生地は綿かと思っていたが、綿65%、レーヨン35%の混紡である。ふきんの縁(耳というそうだ!)が色分けされているのがとても便利。陶磁器用、コップ用、テーブル用など用途で使いわけたり、使う日数を一目でわかる。良いふきんのポイントに付け加えたいのは乾きがとても早いことで、これも◎である。ひとつ難点があるとすれば、近頃はプレートの食器が大きくなってきたため一回り大きなものがほしいところ。
◇どうぐ
〇日東紡の新しいふきん
・サイズ:約420㎜×710㎜  
・材質:綿65% レーヨン35% 
・耳色:赤、黄、緑、白、 
・抗菌剤、蛍光塗料使用なし 
・生産国:日本
・価格:3色6枚箱入り ¥2,257(税込) 
 
URL.http://www.greenshop.co.jp
 
 
 
「とと姉ちゃん」バージョン白・5枚入り \1,609(税込)https://www.a
mazon.co.jp//dp/B01HJ60RYG

 

 

 
 第25回 曙塗り(あけぼのぬり)の椀
                                                                                      森 晴秀
 
 漆器が好きだ。Japanと書くと日本のことをさすが、漆器をも意味する。欧米人が好む多くの漆器の原産国が日本からそうなった。Chinaが磁器をさすのと同じである。
漆は中国をふくむ東アジアと東南アジアで産する。漆は固まるのにかなりの湿気が必要。それで高温多湿な東南アジアから東アジアの一部に漆器が発達した。とりわけ日本は漆器の宝庫である。ミャンマーやタイやベトナムにも漆器はある。仏教の僧侶が托鉢でつかう盆などに漆器をよく見かける。おおらかであるが日本のように洗練されてはいない。中国や朝鮮にもすぐれた漆器はあったが今やその伝統は見る影もない。
 曙塗り(あけぼのぬり)の椀はある骨董店で見つけた。直径は15センチほど。蓋の裏にはすすきと雁の粋な絵柄が蒔絵で描かれている。椀をあけたときの客の驚きの顔が浮かぶ。輪島塗りでたぶん明治時代後半のものだから100年ぐらい前の作。料亭などで会席料理に使われたものだろう。ふくよかなラインをもっているので、汁が少しで具を活かした料理につかったら美しい。この椀を現在つくるとなるととても高価。骨董屋さんで見つけるのが得策だ。
あけぼの塗りは赤漆を下塗りに塗り仕上げを黒漆で塗ったあと、赤の部分が少し見えるように研ぎ出した塗り方。早朝、闇から赤光がさすような印象の肌合いからこの名前があるとされている。この反対に下に黒を塗りその上から赤を塗って黒を研ぎ出したのが根来塗り(ねごろぬり)である。根来塗りはざっくりした大柄なイメージに対して曙塗りはふくよかなテクスチャーだ。
 漆器は手入れがめんどうだと思わているが、さっと洗って早めに拭けば手はかからない。日常食器としてどんどんと使えばよい。この椀、落雁や小さなチョコレートなどの茶菓子を入れてもかわいらしい。
 

24回  MAWAのズボンハンガー         

                           森 晴秀  

 父の代からのズボン吊りが現役で我が家にはある。このほかにもいろいろ製品を試してみた。
二本のはさみ部でつかんでズボンを吊るすタイプ。はさみ部が弱かったり、強すぎてズボンにあとがつくことが多い。はさみ部が木製で滑り止めにフェルトがついているものははさみ加減が弱くよくずり落ちる。スーツ用のジャケット用ハンガーにズボンかけがついたものは長くかけておくとズボンに折り跡がついてしまう。いきついたのが父のズボン吊りであるMAWA社のMAWAmat26。いまも製造され、世界中でつかわれている。
 
金属に滑り止めのPVCコーティングをした裾はさみ部とそれを締めるフック部からなる。裾をつかんで反対に吊るすためズボンの自重でしわが自然とのびる。この滑り止めは強力で今までズボンが落ちたことはなく裾にはさんだ跡もつかない。材質も仕掛けもそれほど複雑ではないので安価なコピー製品もあるが、同じ性能にならない。
 
MAWA社はジャケット、スカート、シャツ、ネクタイ用などさまざまなハンガー一筋のドイツのメーカー。創業は1948年であるから敗戦ドイツから立ち上がった社歴70年ほどの会社。ドイツ本社の社史をみると滑り止めコーティングを施したシャツ用ハンガーを1960年に発売している。滑り止めズボン吊はその後としても50年以上のロングセラー。我が家にも1970年代半ばにはあった。はや40年使っていてもびくともしない耐久性。メイドインジャーマニーの律儀なズボン吊りである。
 
◇どうぐ
MAWA ズボン吊り 
サイズ  W260×H165×D35㎜ 重さ140g
価格   702円(税抜650円) 10本セット7020円(税抜6500円)
原産国  ドイツ
購入サイト http://www.mawa-shop.jp/
 
 第23回 ジャッキ・軍手 『震災のときあったらいいもの手帳 2016年版』より                                                                                                 森 晴秀
 
 
 
 
 
我が家ではマイカーを止めてから10数年になる。土日しか運転しなかったし、車の維持費を考えると毎日タクシーで帰宅したほうが経済的。運転主は飲めないのもあった。マイカーの中で手元に残したのがパンタグラフ型のタイヤ交換用のジャッキである。
 ジャッキが阪神淡路大震災で人の救出用に活躍したことを聞いていた。なにかあったらと物置にしまって時々油をさしている。このパンタグラフ型のジャッキはだいたいのものが対加重1tである。救出用に本格的に使うとなると少し役不足かもしれない。自治会の防災倉庫には油圧式にジャッキがあり、こちらは対加重が2.5トンである。
 滑り止めのついた軍手も便利なもののひとつ。ガレキの撤去やモノの持ち運びに大活躍する。日常作業や草取りなどにつかえるので日ごろからストックして使いまわせる。最近では吸着力のもっとあるゴム系の軍手があるがあれはお薦めできない。半年もほっと置くとゴムが溶けてくるのでお気をつけください。
 
 
 
 
 
 
 
 
 第22回 キャリーカート・平台車とガムテープ
『震災のときあたらいいもの手帖 2016』より                                                                                      森 晴秀
 
 特別な防災グッズではなくとも常日頃から使っているものが災害時や緊急時におおいに活躍することがよくある。その代表選手がガムテープである。
 震災手帖には「衣服の修理や荷物の固定、さらには骨折のさいには添え木の固定、三角巾代わり、傷の止血など用途は無限大。靴下の裏に貼れば、足のケガ防止にも。布製が丈夫で使いやすい。はがしやすいマスキングテープも便利。」とある。愛犬の肉球をガレキなどから守るのにも活躍したという。我が家でも荷物の梱包用だけではなく、チョッとした仮止め、カッターの刃の廃棄の安全対策、ガラスコップの破損破片を拾うなどいろいろと日常的に活躍している。一家に二巻きぐらい常備しておきたいものの1つだ。
 キャリーカートや平台車は自宅からの荷物搬出時に便利だけではない。災害時には一時的に断水することがよくある。水は命の糧であると同時に暮らしになくてはならない。実際に震災体験をした主婦の方によると、給水車から20リットルのポリタンク2個を自宅までもって行くのに台車が大活躍したそうである。素手では2個のポリタンクを運ぶのは用意ではない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
第21回 水泳用ゴーグルとお薬手帳 
『震災のときあったらいいもの手帖』より
                             森 晴秀
 地震は自然現象だから私たちの手では防げない。震災は地震によって引き起こされる社会現象だから、人の準備や工夫によって少なくしたり小さくしたりすることができる。だから、減災、縮災、防災が可能となる。
 震災のあとの瓦礫の撤去や後片付けはたいへんである。そのときに役立つのがゴーグル。砂ぼこりや危険物から眼をまもるのにたいへん役立つ。業務用の防塵ゴーグルも売っているが、水泳用でもスキー用でもバイク用でもOK。
 病院外の調剤薬局で処方箋にしたがって薬をもらうとき、お薬手帳は義務化された。これ、あなたの健康に関する情報の宝庫です。医療関係者にとっていざというときにとても役立つ「あなたの命を守る手帳」として常備したい。飲んでいる薬の名前はけっこう忘れてしまうもの!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 第20回 『震災のときあったらいいもの手帖』は災害に対するものとこころの準備本                                     森 晴秀
 
 
 いまも熊本の地はゆれ続けている。2016年4月16日夜の前震から1週間、被災された方はほんとうに心身ともにお疲れだと思う。2011年の東日本大地震は海溝型であったが、熊本地震は内陸断層型で直下型地震。震源との距離が近いために木造家屋にたいする被害も大きくなる。1995年の兵庫県南部地震(災害名は「阪神淡路大震災」)も内陸断層型。
 太平洋プレート、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートという4つのプレートの上にある日本。こんな国は世界中にない。この4つのプレートのせめぎあいが日本列島をさらに多くのブロックに分ける。ブロックの動きの違いがひずみをつくり、その境で内陸断層型という地震をおこすという。GPSの最新データを分析研究して分かってきた。
阪神淡路大震災では淡路島を横切り阪神地区に抜ける断層がザックと動いた。そのときに被災されご苦労された主婦の方が、東日本大震災の被災者に向けてお役立ち情報をツイッターした。それを元に取材、情報整理してまとめられたのが『震災のときあったらいいもの手帖 体験したから伝えられる知恵103』という書籍。お子さんのいる主婦目線でひろいあげられたものとことはほんとに役立つもの。
内容は、1.身の安全①身を守る②助けを呼ぶ③手当てをする④危険物をのぞく 2.飲食物①水②食べ物③調理器具 3.生活手段①トイレ②防寒用品③衛生用品④住環境 
4.連絡・情報①連絡②情報 5.災害の心得 6.あわてないメモ となっている。1ページ1つのものとことが、150字前後の簡潔な文と分かりやすいイラストでまとめられていてとても便利。災害大国・日本に暮らし、住むことはだれでもが震災にあう可能性はある。そのときのためのこととこころの準備本である。
これから何回かにわたってその内容を紹介する。
 

 第19回 米を炊くならストウブが美味く、手間がだんぜん楽!    森 晴彦                                                             

 
 上手く炊けた白米はオカズがなくともそれだけで食がすすむ。春先だと蕗味噌、新モノの縮緬雑魚、塩コンブ、ごま塩、ちょっとした香の物など一品があればそれだけで至福である。糖質制限などチャンチャラおかしく、日本人に生まれてよかったと思う。
 食いしん坊が高じて色々な器具をためした。圧力式IH電気炊飯器、米炊き専用の土鍋かまどさん、米が美味く炊けるという日本や海外の色々な琺瑯鍋や海外の、そして炊飯用の鉄鍋に厚い木蓋のセットなどなど。みなそこそこに美味い米が炊けるが、手間はいろいろ。そのなかで米の美味さ、ふっくらさ、手間で群を抜いたのがストウブのラウンドを使った炊飯。日本の米にフランスの鍋がいちばん向くとは!
 試したさまざまな道具たちで炊く前の手間は基本的に同じ。適量*の米を水で研ぎ、ざるにあけ15分おく。それから適量の水をいれ10分つけるというもの。新米や季節によってざる上げ時間をすこしかえる。この方法、天ぷら屋『ハゲ天』で教わった。『ハゲ天』ではガス炊飯器。
 ストウブでの炊き方は中火で沸騰するまで加熱、沸騰したら蓋をして弱火で10分、火を止めて13分蒸らす。しめて30分以内、それだけ。粒だった米がとても甘くふっくら。20センチのココッとで3合まで炊ける。湯気漏れを心配したが、蓋が重く密閉度が高いのできわめて少々で水垂れはほとんどなし。内部はほうろうのため土鍋のようにくっつくことはない。鍋の洗いなどもいたって簡単。電気炊飯器だと鍋、パッキンの付いた蓋、蒸気抜きなどそれぞれに洗う必要がある。土鍋だともっと厄介。
 電気炊飯器の便利な機能にタイマーがある。これも朝30分早く起きるか、30分炊けるのを楽しみに夕刻一杯やるかで解決できる。電気の節約にもなる。うちの嫁はんは圧力式IH炊飯器をとうとうガレージセールに出してしまった。
 冬場のかきの炊き込みご飯はみごとに美味しかった。山椒の芽が出はじめたこれからはたけのこご飯、鯛めしなど滋味のある炊き込みご飯にも万能である。
 
*適量:季節や新米のちがい、米の硬軟の好みによって違う。スタンダードは米1合に水180cc.
 
◇どうぐ ピコ・ココットラウンド 18センチ ¥24,840 ブラック、グランブルー、グレー、チェリー、バジルグリーン
                            グレナディンレッド、マスタード、シナモン  
 
 第18回 使い勝手抜群のビルトインコンロ、+do(プラスドゥ)        森 晴秀
 
 自宅で料理をする男たちは業務用のキッチンやコンロにあこがれる。パラパラの炒飯やカリッとした天ぷらをつくりたい。ところが業務用のコンロは熱量が約12,000キロカロリー、中華鍋コンロにいたっては約22,000キロカロリー以上と強大。これをプロではない料理人がコントロールすることは難しく、すぐに焦がしてしまうのがおちである。
プロ用を設置するとなると、コンロの選定、ガス配管の変更、換気扇を業務用にして吸気口を設置、コンロ周囲の壁の不燃化などなどいろいろと手間、費用のかかることが多い。その上にプロ用はグリルが付いていないなど、かみさんの了解をとることは至難のわざである。自宅のキッチンリフォームの折に家庭用コンロで高カロリーバーナーを持つものを探した。デザインにうるさいかみさんの眼にかなったのがコンロ+doである。5年間使っている。
 デザインはプロ仕様を連想させ、シンプルで無駄がなく飽きない。コンロは三口で4,510キロカロリーの高火力バーナーをもつ。中華鍋をまっとうにふるえばパラパラ炒飯が見事にできる。ゴトクは鋳物製のがっちりしたものでコンロ全体を3分割して被う。これがとても便利。どこにでも調理器具がおけ、鍋やフライパン、鉄瓶などをチョッとずらしておくのにとても重宝。大きな鍋を置いても安定している。三つのコンロの操作ツマミは天板の上に配置され、料理しながら使いやすい。見た目で消し忘れもすぐ分かる。操作パネルも理路整然として見える化されたデザインで使いやすい。立消え安全機能や天ぷら油過熱防止機能などの安全機能もいろいろついている。
 グリルは両面焼きで鋳鉄ホーロー仕上げのダッチオーブンが付属。ダッチオーブンを使った肉や野菜の蒸し焼きはとてもヘルシーで素材のうまみが凝縮する。いまやかみさんの定番料理となった。両面グリルをつかって刺身用の切り身をさっとあぶった酒のあてはじつに旨い。グリルは工夫しだいで料理の幅がぐっと広がる。
 2006年発売で10年以上毎年コンスタントに出ていると聞いた。日本の家庭料理の底力を感じる製品である。
 
◇どうぐ
㈱ノーリツ(ハーマン) ビルトインコンロS-Blink+do    型番:N3WF2KJTKST
天板サイズ75センチ 希望小売価格 \250,000(税別)
 第17回 薬剤用のさじ                 森 晴秀
 
 草木染の染色家の台所でこれを見つけた。もともとは草木染めの触媒を染色液へ入れるための計量用に使いはじめたものだ。台所での調理に使ってみると何かと便利なので台所にも居場所をつくったとのこと。
 元来は薬剤の計量用さじで大中小の3本セット。粉末状の薬を秤にすくって載せるのに使う。材質はステンレス。大き目のスプーンと反対の端に耳かきを大きくしたような小さなスプーンがついている。大と小のスプーンの向きは逆。これは使うときもバランスの面からとても良い。
大きいほうは調味料をいれたり、チョッと味噌を溶く、味見をするなど使い方はいろいろある。小さなスプーンがきわめて便利。だしや薬味をほんのチョッと加えるのに重宝。瓶詰めの粒ウニなど瓶のそこに残ったものをとろうとしても通常のスプーンは入らない。箸でもなかなか最後までは採りきれない。そこで小さなスプーンのお出まし。サッと残さず採れる。メデタシである。練り状のモノを最後までとりきる優れもの。
 私は東急ハンズの理科実験器具売り場で見つけた。いまはWEBで薬剤用スプーンで出てきます。
 
◇どうぐ
薬剤用スプーン 材質:ステンレス 大中小3本セット
¥300円前後(税別)
第16回 プラスのハサミ                森 晴秀
 
「馬鹿と鋏は使いようで切れる」というが、切れないハサミは仕事がとどこおって困る。
 いちど切れ味のよいハサミを知ってしまうと切れ味の悪いものは使いたくない。それは包丁やナイフなどにもいえるが、包丁やナイフは切れ味の悪いものでも研ぐことによってかなり切れ味はよくなる。ハサミは素人が研ぐことはご法度。ハサミの左右には微妙なカーブがついていて、そのかみ合わせで紙を押し切っていくためカーブが切れ味と関連している。単順に研いでしまうと微妙なカーブがなくなってしまってまったく切れなくなる。私も自分で研いで失態をおかし、人形町のうぶげ屋さんにしかられた。研ぐときはプロに任せる。
 いま、日常的につかっているハサミはPLUSのエクストラの全長185ミリ。10年ほどまえにPLUSが運営する文具通販アスクルで購入した。カタログにあるハサミの左右非対称のデザインが美しかったので注文してしまった。
  使ってみてビックリ。切れ味のすごいこと、紙が気持ちよくスパッと切れる。郵便物の開封がサクサクと楽しい。本体は梨地仕上げのハイカーボンステンレスでできている。左右非対称の流れるようなデザインは軽やか。指にしっくりくる指リング。持ち重りは軽からず重からず。
  定価は1,500円(税別)だが、アスクルなどの通販サイトでは900円前後(税別)という価格でとても手ごろ。ハサミはよいものに出会えばそう壊れるものではないからほんとうにお買い得。発売は1989年でありロングセラー。全長165ミリの短いハサミも使ってみたが長いほうが用途はひろく使い勝手がよい。
 
◇どうぐ
PLUS ハサミ エクストラ
・全長185ミリ ¥920(税別)
・全長165ミリ ¥825(税別)
 
 
 
 
 第15回 金継ぎの水差し                           森 晴秀
   
 
この片口、我が家で水割り用に日常つかいしている陶器の水差し。粋な模様に見えるのは金継ぎである。酔って手が滑り欠いてしまった。女房どのに怒られたこと・・・。
 プロの金継ぎ屋さん(漆器屋さん)をさがし、そこに欠けた片口の修理を女房どのは依頼。帰ってきた片口がこの姿である。無傷のときよりなにやら艶っぽく粋になっているから不思議で、いつもの水割りがうまくなった感じだ。
 金継ぎは茶の湯や美術館や博物館の名品の世界だけのことと思っていた。日々の暮らしのなかに金継ぎされた器がおさまってみると完成品でない楽しさがあり、食器棚が豊かになった。古物商ではないが景色がかわったということ。
 金継ぎはこわれた陶磁器などを漆でつくろい修理して金蒔絵の技法でしあげる修理法である。漆を塗り、乾かし、磨くという作業には1週間ほどかかる。これを何回か繰り返したのち金蒔絵をほどこすので1ヶ月ほど月日が必要である。室町時代より茶人や武将は好んだ茶器がこわれると職人に金継ぎを頼んだ。再生した器の修理跡を愛でながら楽しんできた。きわめて日本的なモノとの接し方である。
 好きだったものを壊したときの悔しさと後悔の念は誰にでもある。そのときに再生させて愛でるのもなかなか粋な話である。プロの金継ぎ職人もかなり出てきたし、街では金継ぎ教室もかなりあるので挑戦してみるのも楽しい。
 
 
金継ぎの名品
 URL. http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kyoiku/bunkazai/kougeihin/8.html
 
 
第14回 ドイツの律儀なシャープペンシル              森 晴秀
 
 
25年ほどまえに購入したシャープペンシルを今も使っている。ライトブルーの軸、鮮やかなオレンジの芯タンク、黒ゴムの滑り止め、日本にはない色使い。芯送りのスムーズさ、適度な持ちおもり、手へのフィット感は心地よい。フランクフルトの文房具店で一目見て0.9ミリ用を3本買ってしまった。ステッドラーのシャープペンシルである。軸のライトブルーはステッドラーのブランドカラー「マルスブルー」を思い出させる。一本は事務所、一本は自宅、一本はかみさん用。ちょっとゴムの滑り止めがゆるくはなったが3本とも重宝して現役である。
  当時の日本のシャープペンはどうもデザインが野暮ったく、0.9ミリ用もほとんどなかった。芯タンクのオレンジはISOで0.9ミリをあらわすことをステッドラー日本㈱の方から聞いた。いかにも律儀なドイツ製品らしいデザイン思考だ。この製品は日本ではすでにカタログにはないが、ドイツでは販売されているロングセラーだそうだ。 
ステッドラーというと我々世代には製図用の芯ホルダーと芯を細くする芯削り、そして消しゴムが日常使いの道具。日本中の製図をするものたちがどれほど世話になってきたか・・・。CADの世界となった今も使っている人は多いはずである。精密な製図用筆記具メーカーとして日本ではステッドラーを位置づけているが、本国ドイツでは創業1835年の総合筆記具メーカーとして君臨している。
  二年ほど前から使い始めたのが製図用の925 35シリーズの0.9ミリのシャープペン。これをラフスケッチやエスキスに使っている。初代の925が1989年の発売というから25年以上のロングセラー。その後、925 25、925 35、925 65 とバリエーションを増やしている。 ボディはアルミ製のチョッとメカニックなシャープで持ちおもりもちょうど良く、芯送りもさすが。これはドイツ製かと思っていたら日本仕様のメイドインジャパンだというのでビックリ。シャープペンの需要はドイツ本国より、漢字文化圏で細かい字をたくさん書く必要のある日本が高いと聞いた。
 帰り際ステッドラーさんでかわいらしく面白いシャープペンを見つけた。この製品の話は使ってみてのお楽しみ!
◇どうぐ
ステッドラー925 35シリーズ
5線種0.3 0.5 0.7 0.9 2.0
材質:ボディ アルミ
重さ:17g 2.0ミリ用は21.5g
価格:¥1200/本 税別
ステッドラー日本株式会社
 
 第13回 千切り生姜1本つまめる盛付け箸         森 晴秀
 
この箸にであったのは銀座の「半くり」である。彩りあるお造りがのる美しい蒔絵の漆器、そのまえに美しく長い箸がおかれていた。30cmはあろうか、これほどの長い箸で食事をするのは始めて。
  使ってみるとすごい!箸づかいがまるで違う。自分がとても器用になったように自由自在で繊細な使い勝手。刺身のつまの紫芽を一つ一つらくらくとつまめた。
  店主に箸の由来をきくと、京都の市原平兵衞商店の調理用の盛付け箸で、まともな調理人は盛付けにこの箸をつかっているという。     京都の料理屋では客用にこの箸をつかっている店がかなりあるとのこと。
  京都にいったおりに四条通りにある市原平兵衞商店でもとめた。
  創業は明和元年・1764年というから250年の老舗である。長さは33センチ、28センチ、23センチの三種類。盛付けには33センチと28センチがつかいよく、来客用には23センチが向く。箸先は1.5ミリほどで、たいへんに細い。
  素材は竹で無塗装、かるく竹の表情が美しい。竹という素材からこの盛付け箸を削りだす職人さんはすごい!
料理は味がいくら良くても盛付けのセンスが悪いと台無しである。料理の腕は男としてそこそこだと思っているが、盛付けがまったくダメだとかみさんによくいわれる。
  盛付けの3原則は彩り、バランス、高さ。料理長にしか許されなかったこの箸をつかって挑戦である。
  この箸を食事につかって気がついたこと。いままでつまみにくかった茶碗の隅にある白米一粒、ひじきの煮つけ一本、ゴマ一粒、千切り生姜一本、ねぎ一粒などがつまめる。そして魚の煮つけや焼き物も残すところが出ない。
  急に器用になったようであるし、食べる所作もなにやら美しくなった気がする。道具ひとつで変わるものだ。日本の子供たちにはこの箸を使わせたい。
 
◇どうぐ
市原平兵衞商店の盛付け箸 竹製
33センチ  
28センチ  1300円(税込み1404円)
23センチ  1200円(税込み1296円)
◇市原平兵衛商店
京都府京都市下京区堺町通四条下る小石町118−1
通販サイトはありませんが、大阪の「工芸店ようび」で取り扱いあり。
 
 
 第12回 STAUBのソテーパンは日本の鍋にもぴったり!    森 晴秀
 
秋が深まると、鍋の季節がやってくる。地鶏と秋のキノコの水炊き、豚の三枚肉ともやしの鍋、タラと豆腐の湯豆腐、たっぷりキムチのチゲ鍋、ウーンみんな美味い。たまには極上の霜降り牛ですき焼きもよい。
  すき焼き鍋といえば、柳宗理がデザインした南部鉄器のすき焼き鍋がフォルムの美しさ、使いがってもふくめてベストワン。欠点があるとすれば、鉄の鋳物鍋は匂いがうつることである。すき焼き専用ならよいが、さまざまな鍋料理で使いまわすと前の鍋料理の匂いがすこし出るのがこまる。
  そこでおすすめなのがSTAUBのブレイザー・ソテーパン。STAUBはフランス・アルザス地方の鋳物ホーローキッチンウエアのメーカー。1974年創業とあるからメーカーとしては新しい。日常使いしているピコ・ココットラウンドは、①頑丈で密閉度の高い鍋蓋の裏の突起・ピコから、食材からでた水分が鍋にもどり食材の旨みと香りを逃さない、②鍋と蓋をふくめて重たく頑丈な鋳物に何層にもほどこされた美しいホウロウの鍋肌と使い勝手のよさが頼もしい。プロにも洋和をとわず絶大な人気なのがよくわかる。
  ブレイザーはココットにくらべて7㎝と浅いがフライパンより深い。これが日本の家庭でおこなうほとんどの鍋物にうまく適合する。卓上コンロの上に載せても具がよく見えるし、フォルムと色合いで食卓が華やぐ。ソテーパンの名のように本来はロールキャベツや厚切りの具材をじっくり焼くのにもピッタリ。径は24㎝と28㎝があるが大家族でなければ24㎝がおすすめ。フランス生まれであるが日本の調理の万能選手として使っている。
  蛇足であるが琺瑯(ほうろう)、エマイユ、エナメルはすべて同じもので金属にガラス質の釉薬を焼成させたものの各国名。七宝はその工芸品。
 
◇どうぐ
STAUB ブレイザー 24㎝
容量:2.4ℓ 重さ:4,18㎏
ブラック、グレー、チェリー
 ¥32,400(参考価格)
グランブルー、バジルグリーン、グレナディンレッド
 ¥34,560(参考価格)
製造元
STAUB(ツヴィリング J.A. ヘンケルス ジャパン)
 
第11回  均一に塗れ、さっと貼れるアラビックヤマト     森 晴秀
 
 紙と紙がなぜくっつくのか知っていますか?
 紙の表面にはもともと細かい凸凹がある。でんぷん糊の場合、紙のうえに糊を薄くのばして塗り、ほかの紙を重ねると糊に含まれるデンプンが水分とともに紙の凸凹やその隙間に浸透していく。さらに糊は水分をとられながらどんどんと紙の凸凹や隙間にはいっていく。デンプンと紙の距離が1億分の3~5cmの距離までになると分子間力が働いて互いに引き合う。紙から水分が蒸発して紙とデンプン、デンプンとデンプンがさらにくっつき、固まる。乾いた糊はアンカー効果といって船のイカリのような働きで紙にひっかかる。これは糊のヤマトさんから聞いたもの。だが、未だほんとうのところは明確に分かっておらず、現在のところ一番適当だという原理を話してくれた。
 ヤマト糊を作ったのは新炭商だった木内弥吉。炭の小分け販売の袋張りの糊が腐ることから自主開発したのが糊屋さんの始まりで、明治32年。ヤマト糊といえば、グリーンや青のチューブや小ボトルに入ったでんぷん糊を、幼稚園や小学生のときにペタペタと使ったのを覚えている事だろう。
 明治末期にアラビア糊というのが輸入されていた。これは液状の天然ゴム糊を塗り口の海綿からしみ出させるタイプの糊。でんぷん糊と違い、手を汚さないのが好評だったが、高価なのと海綿が固まるため普及は一部であった。大正期から国産化されている。
 アラビア糊の容器の便利さを活かし海綿キャップ固化の不便さを克服しようと開発されたのがアラビックヤマト。糊は昭和30年ころ普及してきた合成糊を使用。液体としての糊の粘度とキャップの目の細度と塗りの均一さのバランスをとるのは大変なことだ。聞いてみるとキャップの構造とスポンジ材の開発に3年ほどかかったという。販売したが当時普通の糊の1,5倍の金額。すぐには売れなかった。数十万個のサンプルを使い手に配り、消費者からの反響を作る作戦が大成功、いまがある。
 キャップを分解してみると、キャップ、小さなザル、スポンジの構造に”へー”と驚くはずだ!
 
◇どうぐ
◇アラビックヤマトスタンダード 容量50ml
参考価格¥170(税別)
 今はさまざまなバリエーションがある。
◇発売元 ヤマト株式会社
第10回  ラッキーウッドのナイフ&フォーク         森 晴秀
 
 西洋式の料理につかうナイフやフォークなどの洋食器を総称してカトラリーという。晩餐会などで使用される正式なカトラリーは、洋食器のアイテムが30種類以上におよぶ。
 このNo.1100シリーズが発売されたのは1960年、すでに55年以上のロングセラー。素材は18-10ステンレス、刃先は鏡面仕上げで柄はヘアーライン仕上げのコントラストが美しい。このカトラリーは日本人のための洋食器をつくろうと小林工業㈱と当時の産業工芸試験所(いまの一般財団法人工芸財団)が協力して挑んだもの。
 欧米のスタンダードなカトラリーに比べすこし小ぶりでチョット軽い。切れ味や、ささり具合、飲み心地はきわめていい塩梅。とても絶妙な持ちおもりをしていて、手の小さな日本女性でもあつかいやすくバランスされている。和の漆テーブル敷き台にもしっくり合うデザインと大きさで食卓がきりっと華やぐ。1966年に洋食器ではじめて『グッドデザイン賞』を受賞し、ロングデザイン賞も受けている。
 ラッキーウッドは小林工業㈱の商標。創業は1868(明治元)年というから150年の金属加工業である。当初は矢立てや灰ならしなどを製作。1915(大正4)年からカトラリーをつくり洋食器の草分けである。
 カトラリーの工場を見せていただいた。モデルの金型の製作にはじまり、使用する地金の厚さの調整、地抜き、整形、バリ取り、研磨、全品検査の一連の流れのなかがさらにいくつかに分かれている。それぞれの職人さんが微妙な調整をしながらおのおのの工程を担っている。モデルの金型の保守・調整、修理などに専従する職人さんもいた。いやーすごい、一本のフォーク、スプーン、ナイフにこれほどまでに手間と意識がこめられていたとは。
 モデルNo.1100の24ピースのディナーセットの現在の価格は2.3万円(税抜)。一生もんであることを考えるととても手頃。一生どころか2代、3代にわったて使える。55年間使っている女性がおられ、いまも現役で食卓を飾っている。メーカーとしてはうれしいやら、こまったやらである。その女性が同じセットをお嬢さんに買い、“今度は孫娘が嫁ぐときに持たせるのが私の楽しみなの・・・”と告げた。モノづくりにとって“最高のほめ言葉”だ。
 
◇どうぐ
◇NO.1100<デラックス>シリーズ
・24ピース ディナーセット(6客用)
 ¥23,000(本体価格)
・30ピース ディナーセット(6客用)
 ¥26,600(本体価格)

◇製造元
・ラッキーウッド 小林工業㈱
新潟県燕市南5-11-35
 
第9回  コワルスキーじいさんの潤滑剤WD-40          森 晴秀
 
 クリント・イーストウッドはお好きですか! 
 彼の監督・主演した映画に『グラン・トリノ』がある。頑固一徹の元自動車工・コワルスキーとモン族(中国、タイ、ラオス、ベトナムに住む山岳民族。ベトナム戦争時に米国に兵として雇われ、敗戦で迫害されアメリカに多数移住。)の少年・タオとの交流と別れのものがたり。
 50年を自動車工として叩き上げた男のガレージには集めた工具とモノたちが整然と並べられている。天上付け扇風機の修理で「有能な男ならWD-40(潤滑油)とバイスクリプト(日本のパイプレンチのようなモノ)とダクトテープ(配管用ビニールテープ)があれば家のおおかたの直しは方がつく!」とコワルスキーが自分の愛用しているモノを与える場面がある。その潤滑剤WD-40はちょっと日本には馴染みがうすい。
 我が家ではCRE5-56を金属に被膜をつくり潤滑効果や防錆効果を発揮するモノとして長年使ってきた。戸や窓やドアなどのレールや蝶番から自転車、自動車などのさまざまな個所などに使用。しかし、揮発性の溶剤を使用しているため、その効果はあまり持続しないこと、油分を流してしまうことがわかった。ゴム類やプラスチックの一部を溶かすこともわかり、今は使い手からその制約を喧伝されている。また、鍵穴に使うのは禁物でほこりや呼ぶと鍵屋さんからは指摘される。
 防錆・潤滑剤として他のものはないのかと探したがメガネにかなうものはものはなかなかなった。そしてコワルスキーじいさんが推すWD-40に出会う。東急ハンズの片すみに5-56の多勢にまじってポツンとあった。使ってみると快適。野ざらしのクロスバイクに錆が出なくなった。蝶番などの軋みとりにも長持ちする。錆びついたビスやナットがある個所を緩めるのシュッと一吹きしてチョット時間をおき、ドライバーやスパナを使って緩める。工具箱には欠かせないどうぐとなった。不満をいえば、細ノズルとの相性がすこし悪いところ。アマゾンでも売っていることに気がついた。ユザーのなかに猟銃をあつかう人の声がある。銃はもっとも危険で繊細。その取扱い者の声はたしかである。
 アメリカは”Do it Youself”の国。その上に修理をたのむと料金の高さと時間のいい加減さにあきれる国。だからなんでも自分で直し、改良し、発明する。
 『グラン・トリノ』は俳優クリントイーストウッドの最後の映画になった。彼がタオ少年に教えたように、子供たち特に男の子にはどうぐを使い、メンテナンスし、直す術を教えておきたいな!
 
◇どうぐ
◇WD-40 320mm
参考価格¥1,350(税抜き)
 日本の発売元: エステートレーディング
◇『グラン・トリノ』の一場面 
 
第8回  亀の子束子(たわし)と棕櫚のねじり束子         森 晴秀 
 
棕櫚の束子に出会ったのは『日本の職人展』をしていたデパート。形や肌触り、その手仕事の丁寧さには感心したが、買うのはチョットためらった。普通の『亀の子束子』の10倍の価格である。 
私が食器や鍋の洗いに通常つかっているのは、3種類。サカナの形をしたスポンジ、亀の子束子の中サイズ、そして金属磨きのスポンジ。食器の種類、料理による食材や汚れの質、鍋やフライパンの材質や形状によって使い分けたり、混合して洗っている。 
私は食器や調理器具の洗いのプロである、とひそかに自分で思っている。老舗の天ぷらやの板場の洗い場にかなりの期間いた。天ぷら油のついた食器を昼、夜に百セットほど洗う。プロの店である、板長、二板、そして下働きさんの眼は厳しい。食器洗いが終わり、その日最後に洗い、磨くのが銅製の大きな天ぷら鍋。ピカピカにして明日に備える。いあやー鍛えられた。でも、ときどき嫁はんに汚れが落ちていないと指摘される。
洗いはプロの店でも家庭でも洗いにの前にさっと汚れを流しておくのが鉄則。『亀の子束子』はパーム椰子(ココナッツ椰子)の繊維を束ねたもの。棕櫚に比べ繊維の質は太く堅いが、日々の荒っぽい使いかたにもびくともしない。鉄製の中華鍋を洗剤なしで洗うには最適で、プロは中華鍋をごしごし洗いまた火ににかける。製造しているのは西尾商店。亀の子束子を発明したのが明治40年というから110年続く老舗のロングセラー。 棕櫚は繊維がココナッツ椰子にくらべもっと細く、肌理が優しく、材へのあたりが柔らかい。アルミの行平鍋や良質なステンレス鍋、ホーロー鍋にも安心して使える。それに、このねじれがいい。コップのなかでぐるっと束子を回すだけで汚れがとれる。形もかわいらしく、女性の手の大きさになじむサイズ。洗い場の万能選手である。  手入れはよく水気をきって干すこと。束子はカスが付きやすいので、洗う前にさっとカスを流しておくのを忘れずに!
 
◇どうぐ
・亀の子束子1号 3号
80×100×50mm ¥313(税込み)
80×140×50mm ¥415(税込み)
製造元:㈱亀の子束子西尾商店
 
・紀州産棕櫚束子 ねじり
60×140×60mm ¥2916(税込み)
製造元:高田耕造商店 
 
第7回  保温できるフレンチプレスのコーヒー          森 晴秀
 
 コーヒーを最初に味わったのは、もう半世紀以上前のパーコレター。母が楽しそうに淹れたコーヒーの香りが台所中に満ちた。記憶をたどると少し薄めだったが、ザラザラした豆の味わい。
 思い出にのこる淹れかたがいくつかある。JAZZクラブ・渋谷オスカーでアルバイトをしている時のネルドリップ。深煎りの豆をゆっくりと抽出する味はネットリとしてピュア―でJAZZによく似合う。マスターに、ネルを酸化させないこと、湯の温度管理、落としかたとタイミングを鍛えられた。
 写真のフレンチプレスはステンレスの二重構造でがっちりしていてコーヒーがさめない。容量は800㏄近くあり、たっぷりと5杯分ある。雑貨屋のバーゲンで出会い躊躇せず購入。その理由は、この小型版をだいぶ前に新宿伊勢丹で購入していて、使っていた。
 淹れ方はきわめて簡単。プレスのポットに挽いた豆をいれ、沸騰したお湯をゆっくりと注ぐ。適量注いだらさっとかきまぜプレスの蓋をして4分待つ。プレスを押して抽出しできあがり。淹れた味わいは雑味をふくめてコーヒー豆のすべてがでる。ネルドリップのピュア―さはないが芳醇でボディーのしっかりした豊かさ。ストレート良し、ミルク良し。
 ゆったりとしたカーブの愛嬌あるフォルム、ステンレスの質、細部のつくり、保温性すべてが優れもののフレンチプレス。たぶん日本製。たぶんというのは、いま日本の店頭やアマゾンで見つけることはできないからだ。 日本にまっとうなフレンチプレスがない。ボダム社もあるが道具としてあまい。海外のアマゾンで探すのがいまはベスト。この製品のメーカーが再発してくれるとうれしいのだが・・・。
 
◇どうぐ
ステンレスの二重構造のフレンチプレス
内容量:800㏄  重さ:750g
たぶん正規値¥10,000ぐらい
製造元:不明
◇USアマゾンのフレンチプレスコーナー
 
第6回  ナイフ工房のソムリエナイフ            森 晴秀 
 
 パリのビストロやカフェでいそがしく立ち回るギャルソン。かれらがワインのコルクをスルスルと抜くさまはあでやかで美しい。
 ギャルソンやソムリエがワインやビールを開ける時につかう道具がソムリエナイフ。フランスの最高峰はラギオール社のソムリエナイフで、値ははるもののつかい勝手、フォルムとディテールはすばらしい。
 ワインのコルク抜きにはさまざま方式、種類がある。ボトルネックを銜えてスクリュー取っ手をくるくると回すもの、圧縮空気の力を利用する便利ものなどいろいろと試してきた。ワインをオープンする立ち居振る舞いがもっとさまになるのがソムリエナイフ。 最高級品のラギオールも良いが、刃物の国・日本でなぜ同じレベルのものをつくらないのかと思っていた。そして、出会った。
 刃物の町・岐阜県関市にある豊和刃物製作所のソムリエナイフATHRO(アスロ)。
 私がつかっているのはスタンダードシリーズで柄の材質がココボロのもの。封を切るブレードはAUS-6材でさすが刃物屋さん、スパッと切れる。スクリューとホルダーは良質なステンレス、柄に黒檀やタガヤサンなどの銘木がはめ込まれている。ブレードの切れ味、スクリューの入り、ホルダーのかかり、留め金のしまり、すべて素晴らしい。
 ワインを開けるのが楽しくなる。
ワイン好き何人かにプレゼントした。みな気に入って常用になっている日本のソムリエナイフ。
 
◇どうぐ
ソムリエナイフATHRO
スタンダードシリーズ 柄はパールウッド、タガヤサン、ココボロ、黒檀、ダイヤモンドウッドの5種類
¥10,500(税別)
◇豊和刃物製作所
岐阜県関市下有4196‐6
☎0575-22-9305
第5回  私を呼んだ大ぶりな土瓶              森 晴秀 
 
 店を散策していて、しなものに呼ばれることがある。 
 先日、ある街の骨董屋をのぞいていて、この土瓶にで会った。この骨董屋さん数年前にできた店。和食器と漆器が専門でかわいらしいものが多く、手ごろな値段。店員さんも若い女性ならお客も若い女性が大半でひきも切らない。
 店のなかで浮いていた土瓶があった。なにしろ大ぶりで普通の家庭で日ごろ使うにしてはあまる容量。その上に民芸好みのヤマモモ色とどっしりとしたフォルムをしている。ツルは竹の曲げ物で渋い。肌には「皮」「草」「根」「木」の刻印。ぴんときた、煎じ薬用の土瓶じゃないかと!。「私をここから連れて帰ってください」とこの土瓶から声をかけられた。ホントである。値段を見ると、なんと1500円。決まった。 道々考えた、人が集まったときに使おうと。
 帰って眺めると、けれんのない豊かな形をしている。肌も渋茶のなかに鶯色色が浮かんでいた。水を入れるとなんと1600ミリリットルも入る。麦茶、ほうじ茶、日本酒、焼酎、泡盛なんでもござれである。直火にかけられるのでひと肌のお燗もよいし、氷をぶち込んで冷茶もいける。
  よし、友を招こう。
◇どうぐ
  煎じるための大ぶりな土瓶 たぶん益子焼 容量1.8L ¥1500(税抜き)
◇土瓶を見つけたお店
  吉祥寺PukuPuku
岡本寛治・写真

第4回  何でも包めるもめんの風呂敷              森 晴秀
 
 書籍を急ぎで取次さんに持っていくことがある。80冊の注文の場合、20冊一梱包2.9㎏の書籍梱包を四つで12㎏ちかい重さの荷物となる。荷を動かないようにらくらくと梱包し、電車で運ぶのはかんたんではない。キャリーバックという手もあるが、帰りに手ぶらで帰ってくるとなると風呂敷に勝るものはない。ほんとうに重宝で変幻自在の布である。
 いつも使っているのは三巾(みはば)のもめんの風呂敷。三巾はほぼ104㎝。風呂敷は正方形ではなく、天地と左右の長さは縫製のため少し違っている。もめんの風呂敷は日常使いのものできわめてタフ。物を包んで仕事、暮らし、贈答に使われてきた。布団を包める七巾(約230㎝)の風呂敷まである。
 日本人は一つのものをさまざまに使う文化をもっている。欧米ではナイフ、フォーク、スプーンとそれぞれの機能のモノがあるが、日本では箸一つである。風呂敷も一枚で包み、運び、飾ることができる。日本人は平面を立体にするのも得意。風呂敷も一枚の平面からどんなかたちのモノでも包み込むことができる。本、スイカ、お酒、掛け軸、刀、バイオリン、布団、仏像となんでも包める。すごいの一声である。
 この風呂敷は裏原宿にある、「むす美」で10年ほど前に求めたもの。京都の山田繊維さんが開いたお店。質実剛健のもめん、気品の絹、そしてさまざまな華麗な文様の風呂敷、そして包みかたや使い方のさまざまを見ることができる。
 
◇どうぐ
三巾 もめんシャンタン無地 約104㎝
¥1,500(税別)
色:ムラサキ、エンジ、コン、ベージュ、ミドリ、チャの6色
◇『むす美』
東京都渋谷区神宮前2-38-1
 
◇本
『風呂敷つつみ』 山田悦子・著 岡本寛治・写真
¥1,619(税別) バナナブックス
 
第3回  うぶけやの爪切り                  森 晴秀
 
 パチパチと気もちよく爪が切れていく。日本橋人形町の「うぶけや」さんの爪切りである。もちおもりのする本体は刃の部分がヘアライン仕上げ、てこの部分がなし地仕上げの銀色と金色の2種類で、細部ややすりの仕上げもとてもしっかりして